静岡家庭裁判所 昭和40年(少ハ)2号 決定 1965年6月25日
少年 M・K(昭二〇・七・一生)
主文
少年を満二三歳に達するまで特別少年院に戻して収容する。
理由
一、本件申請の要旨は、少年は昭和三九年三月三〇日静岡家庭裁判所において、満二三歳に達するまで特別少年院に戻して収容する旨の決定を受けて、久里浜少年院に収容されたが、昭和四〇年五月六日同少年院を仮退院して肩書住居地に帰住し、爾来静岡保護観察所の保護観察下にあつたものであるが、(1)昭和四〇年五月○○日ころ父が同道の上担当保護司を訪問しての帰途、その父をまいて姿をくらまし、同日ころ焼津市○○所在のバー「○香」において約一二、〇〇〇円相当の無銭飲食をなし、(2)同月△△日ころ一旦帰宅して約数日間柴○勇方で働いていたが、同年六月○日ころ少年の妹M・Y子名義の貯金通帳及び印鑑を持ち出して家出し、同日○○津農業協同組合において、三、〇〇〇円の払戻しを受けた上静岡市においてパチンコ等に費消し、(3)更に同日静岡市○○町所在のバー「○時」において約一二、〇〇〇円相当の無銭飲食をなし、(4)右無銭飲食により静岡中央警察署に保護され、同月△日ころ同署から母に引取られて帰宅途中、母から現金約一三、〇〇〇円位在中の風呂敷包を奪取して逃走し、同日ころからその翌日に亘つて清水市、静岡市、焼津市内等において、パチンコ飲酒等に右金員を費消し、(5)同月×日ころ及び□日ころの2回に亘り焼津市△△町所在の飲屋「○る○め」他一個所において、約三四、四〇〇円相当の無銭飲食をなし、(6)六月○日ころから本件によつて静岡保護観察所に引致されるまでの間正業に従事しようとせず、無為徒食の生活を続けていた。
以上の事実は、少年が仮退院に際して誓約した犯罪者予防更生法第三四条第二項所定の第一、第二、第四の各号及び同法第三一条第三項にもとづき関東地方更生保護委員会第一部が定めた遵守事項の(イ)固い決心をもつて飲酒をやめること、(ロ)正業につき、落着いてまじめに辛抱強くはげむことのそれぞれに違反し、このまま放置すれば再び非行に陥る虞れがあるから、この際少年をすみやかに少年院に戻して収容する必要あると謂うにある。
そこで当裁判所は、少年の保護事件記録および少年調査記録並びに当審判廷における少年保護者の各供述を綜合すると、少年は昭和四〇年五月六日久里浜少年院を仮退院後父母の許に帰住し、静岡保護観察所の保護観察下にあつたにもかかわらず、その多くは無為徒食生活に終始し、しかも家庭の貧困な生活をかえりみることなく、家族の金銭を持出してはパチンコ遊技、映画見物、飲酒等に費消し、また小遣銭がないときは、前記申請の要旨記載のとおり無銭飲食を累ねていたものであることが認められる。
このような少年の行動及びその知能、性格、環境等諸般の事情から、少年を現状のまま放置するときは再び非行に陥る虞れが顕著であり、また少年の家庭の保護能力に鑑みると、再び少年を少年院に戻して収容し、勤労意欲を養成すると共に規則正しい生活態度を身につけさせ、その間家庭環境を調整して少年の社会復帰につき万全を期する必要がある。よつて少年が満二三歳に達する昭和四三年六月三〇日を限度として特別少年院に戻して収容することを相当と思料し、犯罪者予防更生法第四三条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判官 相原宏)